2018年04月25日

それぞれの雨

24日 午後の春雨は、窓を閉めきった寝室にも、湿った空気を感じさせた。

切れ目のない、生暖かで静かな小降り。
細い雨に煙った、夕方の街並みは、人におちつきをあたえる。

こういう夜は、ひとりで来店する客が占めやすい。
何年も通い続けてくれるお客も多いが、ボクは 「常連客」 「俺の店の客」 と縛る呼び方はしない。
極端に来たり来なくなるお客とは、一時の蜜月で終わり、長いドラマにならないことは経験でわかる。
ただし、その間にぷっつりと顔を見せなくなる時期がはさまっても、不思議とうわさだけは耳に入るもの。

今夜、そんな思い合わせが一致した。
ボックス席が空いて、店の空気がクールダウンしたころ。
立て続けに扉の鐘の音が鳴ると、傘立てに色とりどりの 「アンブレラ」 が入れ替えで立つこと4本。

それぞれのオーダーを聞き、それぞれのお客さんと軽口と冗談を交わす。
カウンター席は、ひとつおきに客が混成し、それぞれがそれぞれの時間を過ごす。
ひとりはたばこをくすぶらせ、もうひとりはスマホをいじるが、その間はつなぎでしかない。

角の席では、女性客が頬杖をついて、モヒートのミントをストローで潰し、香りをたたせている。
今夜はお勤めしている飲食店が暇で、早めの上がりを命じられたという。
大型連休前の給料日前、水商売ではよくあることだ。

ネクタイをゆるめた男性は、バーボンロック2杯で眠りにおちた。
何年も知る顔だから、そのまま意に介さず、しばらく寝かせておいた。
たばこを灰皿にもみ消した男性に、静かなピアノトリオを聴きたいと言われ、要望に合う一枚を流した。
マニアックなお客さんより、シンプルなお客さんの方が、店の雰囲気作りに合わせやすい。

しかし、カウンターに4人いるような気配ではない。
終始自然な面持ちで、それぞれがそれぞれの帰るべき場所へ別れていく。
雨の夜は、それぞれの心を埋め行く思いに、かりたてられるのかも知れない。

最後の傘が引き抜かれたのは、雨止まぬ午前1時。
10分後、またひとつ傘が立ち、仕込んだ人数分のおしぼりがはけたのは、午前2時10分頃。

帰路、まだ雨は降り続いていた。

posted by GIG at 00:00| Comment(0) | Bar & Human | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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