ある夜、女性客に 「マスターの一番好きな映画は何か」 聞かれた。
間は空いたが 「ロッキー」 におちついた。
劇場でも、後のビデオでも繰り返し、映像では描けないディテールも知りたく、初版の原作も読んだ。
過去、何度も書いたが、その魅力はラストシーンまでのプロセスであり、さながら恋愛映画でもある。
ロッキーは不器用な上、情愛がもたらす、エイドリアンへの情緒が印象的だった。
彼女は 「こんな私なのに、どうして」 「この人は、私をからかってるんじゃないの」 など、彼の気持ちを欲しながら、自信のなさで素直になれなかった。
時は、氷点下のフィラデルフィア。
ひとり暮らしのアパートに、彼女を招き入れ、緊張の殻を丁寧にはがし、二人は初めて結ばれた。
そして、目の焦点が離れなくなり、次第に深い愛情ができあがる。
彼は、彼女にしかない、まぶしいものを見つけて、そこを大事に育んだ。
そして、彼女はどんなことがあっても、彼を孤独にしなかった。
映画を鑑賞したのは、中学一年だから、そんな感想は微塵もなく、ファイトシーンに血潮が騒いだだけ。
40年後、見方や考え方は変化し、いい映画は古くなるほど、表面に表れない深い意味を知るもの。
以降のシリーズ作品は、劇画的すぎるので、第一作目がどれほど素晴らしいかこの上なく、その意味で 「ロッキー」 は映画の入門編となり、または応用編でもあり、全映画の卒業証書になると思える。
最後は人生に必要なものを含んだ、素朴で抒情的な映画が、いつまでも人の心の中に残るのでは。
ボクの一番好きな映画は、ロッキーで始まり、ロッキーで終わるようだ。
2017年06月02日
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