今年はとりわけて、日本の 「サスペンス系」 がおもしろかった。
中でも 「ロクヨン」 「クリーパー」 「ミュージアム」 は力作だったし、今までにない 「シンゴジラ」 は、大人も存分に楽しめた。
現在、アニメだけでなく 「日本映画がおもしろくなった」 といわれて、だいぶ久しい。
ひと頃、名作もあった反面、独りよがりな作風、自分に正直じゃない作品もあり、エンドロールを見ながら 「何を伝えたかったのかな」 「縛られてるなあ」 と、首をかしげたくなる映画もあった。
今は監督や脚本、俳優や裏方も、ひとりの強い個性 (アク) が少ない分、それぞれのエキスパートが風通しのいい環境で、持ち味を結集できている感じを受ける。
昔の撮影現場は、監督なら 「黒澤 明」 「大島 渚」 俳優なら 「三船敏郎」 「松田優作」 などに代表される、個性の強さが一触即発な緊張感を落とし、時として修羅場な雰囲気もあったらしく、それがまた、いい方にも、そうでない方にも、影響を及ぼしていたと思える。
もう、スターという職業が、独り歩きするような時代ではない。
それこそ 「美空ひばり」 「石原裕次郎」 のように、話しかけにくい雰囲気のある大スターはいないし、有名人を街角で見かけても、違和感のないのが、アイドルだったりする。
そう、気負いのない時代なんだ。
そういう、気負いのない環境が、映画作りに湿り気をあたえているから、全体が器用になっている。
松田優作は、アクション俳優としての印象が強く、それに悩んでいたという。
ニューヨークでロケを敢行した映画 「人間の証明」 では、アメリカの共演者から 「彼は本当に日本で有名な俳優なのか‥ 一つの演技しかできないのでは」 と酷評され 「野獣死すべし」 を休止符にしてしばらくアクションから、遠ざかった時期があった。
10年後、ハリウッド映画 「ブラックレイン」 のオーディションに受かったとき、逆に監督のほうから 「アクションシーンもあるが、できるか」 聞かれたとき、それまでのイメージをもたれていなかったことに、うれしく感じたというから、スペシャリストであり、目指すはオールマイティーだったのだろう。
昔の俳優は、演技はせまいけど、深みがあった気がする。
今の俳優は、演技が広く、さまざまな役を器用にこなせるが、全員が浅瀬の領域にいる感じもする。
イメージながら、演技の広さでいえば、映画 「ミュージアム」 で、カエル男を演じた 「妻夫木 聡」 は 「カメレオンばりの変幻自在な現代俳優」 だと感じた。
今年最後の映画は、トム・クルーズ主演 「ジャック・リーチャー」 にしようかな。
2016年11月19日
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