2012年10月18日

酒場で説教

上司から飲みに誘われたとき、断りたい部下の心中は何となくわかる。
断りたい理由には、酔った勢いで日頃の仕事ぶりを指摘されたり、批判されたくないと思うのだろう。

27歳だった頃、こんな週末の夜があった。
43歳の管理職に誘われて、二人でゆっくりと原宿のバーで飲むはずだった。
それまで、あまりコミュニケーションが取れていなかった上司だっただけに、その誘いは部下として   快く感じ、僕の中では早くも雪解けムードになっていた。
だが、上司が意図していたことは、やり方という部分では正反対であった。

あの頃は、仕事の苛立ち紛れに人を寄せ付けない、尖った部分があったことは否めない。
どうやら上司は、会議で遠慮会釈ない、僕の発言を苦々しく思っていたようだ。
最初こそ、仕事とは関係のない世間話で和んでいたが、それも束の間で本題を切り出してきた。
「こういうことだったのか…」(説教)と思いながらも、上司に指摘されたことはしっかり承服した。
だけど後味の悪さが残ったのは、必要なことほど会社で言ってほしかったこと。
何もわざわざ部下を誘い出して、飲んだ席で懐刀を出すこともなかろうに。
僕はそういう点で言えば、かけひきができない、鈍感な性格なんだと思う。

じゃあそれで、後程の関係が良くなったかと言えば、そうはならなかった。
後日、上司は僕を説教したと周囲に吹聴して威厳を保っていたらしいが、「酒の力を借りなければ、  言えなかったのかな」と思うと、とても残念な気持になった。
言うべきところは、会社で対面で言ってくれたほうが、よっぽど関係は修復できるもの。
その上で、「さっきは言いすぎた… 今晩は俺の行きつけの店につき合えよ」なんて言うぐらいの器が あれば、部下は「この人のためなら…」と情感にかられるものだ。
それにボタンを掛け違えた関係が続いていくのも、いつまでも気持が悪いだけだしね。
縦社会で生きる男の性ではあるが、思いの外に酒の力を借りた説教は効果がないと思う。
だからと言って、上司の誘いを断って、同世代としか飲めない部下では、その先は高が知れている。

気まずくなった雰囲気、上司は領収証で精算し、僕はもう少し飲んでいたいことを告げて店内で別れた。
そのとき、一緒に飲んでいたキープボトルが「山崎12年」で、それまではまろやかだった味と香りが、 心なしか角ばってきたことを舌が記憶している。
その様子を聞かないフリで見守っていてくれた、原宿のマスターとは今でも25年の交流があるんだ。

僕は仕事の話は大いにしても、酒場の席で部下を説教したことは一度足りともないはずだ。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Bar & Human | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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