2012年06月02日

一期一会

「一期一会」  (一生で一回しか会えない気持ちで交わる) そんな意味であろう。

バーテンダーであれば、座右の銘ともいえる、四文字熟語である。
初対面の店主とお客さんが、会話の接点を探りながら寛ぎを熟成させていく、人間ドラマのような場所がバーだと思っている。
当然、人間同士だから相性こそあるが、所詮は対人関係という、基本能力に行き着くものである。
ゆえにストレスにさらされることもあるが、豊かな人間性に魅せられたときは嬉しくなるものだ。
僕らバーテンダーは、こんな気持で仕事をしているんだと思う。

もうひとつ、バーテンダーの心境をことわざで言い表わせば、「去る者は追わず、来る者は拒まず」。
この場合、「者=客」になるんだけど、可愛げがないと言わずにその先を読んで欲しい。
商売上、誰でも気になることは、今まで来てくれていたお客さんが来なくなること。
店主は「仮説」、「検証」だのと、あれこれと考えを張り巡らすことになる。
そういう考えは、チェーン店のマニュアルイズムに任せておけばいいと思う。
晴れて自由人になったということは、まどろっこしい悩みは作らない生き方を選択したということ。
お客さんの心境が変わったんだから、それはそれでいいし、気にして追いかけることもない。
このように商売上のアプローチをかけないのは、意味があってのことである。

来なくなったお客さんの中には、もしかしたら、リストラや業績不振に苦しんでいるかも知れない。
それか家庭の不和や人間関係の悩みなど、人知れずに頭を抱え込んでいることも考えられる。
何か具体的な力になれるのならいいが、力になれないのなら、おせっかいしないことも仕事。
アプローチの仕方を間違えれば、お客さんに「金の切れ目が縁の切れ目」を突きつけることにもなる。
だから、商売上の営業電話もかけないし、職場に挨拶状も送らないのは配慮している距離なんだ。
商売が下手と言われるが、そういう人間関係が長く続かないことは、経験上わかっているからね。
とは言っても、それまでの関係に礼儀を失する態度を取らないのが大人のルール。

僕は店主として、お客さんといつまでも伸び伸びした関係でいたい。
「人は次第に離れていくこと」を前提にしているので、去る者は追わない考え方でいる。
それを前提にしておけば、人間関係はそうたやすく、悩んだり傷ついたりしないものだ。
人を囲おうとすれば、息苦しくなるのは当然なので、商売上のアプローチはかけない。
急速に親しくなった関係ほど、長続きしないことが多いのはそのためだ。
夫婦と一緒で、「つかず離れず」の距離感を心得ておけば、気分は軽くなるものである。

僕自身、バーテンダーとして、長くつきあうための健全なアプローチだと思っているんだ。
posted by GIG at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | Bar & Human | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
個人経営の居酒屋をしながら、深夜に見るギグさんの記事を原動力にしております。仕事柄(?)通じるものがあり、この記事は貴重でした。こういう見方もあるんですね。今度、勇気をふるって入ります。
Posted by 酒遊人 at 2012年06月05日 02:18
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