2011年07月24日

消えた紳士

仕事柄、深夜に帰宅する。

深夜にすれ違う人影は、新聞配達か飲食店関係者と思しき人が多い。
そんな時間なので、自然と顔は覚えるし、微妙な親近感を持つこともある。
最初は軽く会釈程度だが、よく出くわすようになると「こんばんわ」に変わり、気がつけば「おつかれさまです」、「おやすみなさい」になるのが普通の歩みだろう。

その人は深夜の寂しさを、少し埋めてくれるような存在だった。
2〜3ヶ月位の割合で、僕が住むマンションのエントランスで、深夜にすれ違う同じ住民である。
年齢は60代後半に思え、背格好は細身で身長が高く、一見すると夜の仕事のようにも見える。
その紳士的な振る舞いは、経営者らしき風格も自然に漂わせていた。
その人も僕のことを、夜の仕事と思っているらしく、どこか同業の温かい眼差しを向けていた気がした。
しかし、今年3月頃から、めっきりと出くわさなくなったが、別に気にも留めていなかった。

数日前、古町の飲食店事情に詳しいお客さんと雑談をしていたら、その人の存在を知ることになった。
詳しくはふせるが、昔から夜の古町界隈では、名が通っていた人物であることを断片的に知った。
だが、冒頭で聞かされたことは、数ヶ月前に不慮の事故で亡くなっているとのことだった。
「だからか…」、もう二度と深夜に出会うことがない、どこか心寂しさを感じてしまった。
それは、その人と出くわすことで、「深夜まで仕事をしてるのは、自分だけではない」と、実感させてくれたからだと思える。

身近な存在感が、安心な無言劇になっているときがあるものだ。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Bar & Human | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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