だが、粋な男ほど、そんな冷え込みなど無縁のようである。
19日、コ−トの襟を立てた50歳前後の男性が静かに扉を押した。
この方、たまに新潟入りする出張客であり、宿泊はいつものほど近いAホテルであろうか。
こうして、接待から開放された時間を、一人で愉しむことができる数少ない人物である。
コ−トを脱ぎながら…
「マスタ−元気だった」
「午後に(東京から)新潟入りしたんだけど、それにしても寒いねえ…」
「やっぱり、バ−ボンのお湯割りだな…」
そんないつもの調子から、前回10月からの話の続きをはじめた。
「前回は確か、日本シリ−ズはどこが優勝するかでしたよね…」
私はこう思う…
人は何かをきっかけにして、自分が関わった場所に形跡を残していくのだ。
それは観光めぐりなどとは違い、確かにこの街で過ごした、人間関係の証のことであろう。
会社関係だけでは芸がない… その意味では、【私は証言者】なのかも知れない。
雪が降り続ける深夜の帰り際…
「僕は〇〇と言うんだ」と、四回目の来店にして、自ら初めて名刺を差し出された。
どこか、Nさんとの距離がまた縮まった。
次回は、桜が咲く頃らしい …「ハイ、記憶にとどめておきます」
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