2020年07月17日

無星の客

取るに足らない経験であるが、東京原宿で和食居酒屋のマネージャーを兼任したころがある。

椅子とカウンター席、小上がりとお座敷を合わせて、230席の大型店。
調理場は刺場、焼場、煮方など、精鋭の板前7人と洗い場にパントリー、調理補佐を含め15人。
宴会係を含む、ホールの人数も含めると、ピークは25人体制でシフトしていた。

調理場が足りないときは、目黒雅叙園から助っ人を派遣してもらったり、ホールが足りなければ、会社の事務方まで支援力を結集して、ピークに対応していたほどだ。
大型店は体力勝負のため、目の回りそうな忙しさの中、慢性的に人手不足だった。

そんな中、客のありがたい声は励みになるが、その一方、理不尽な苦言を受けるのも仕事になる。
顧客満足度を優先し、店舗の立場も理解してもらいながら、解決に導くのがクレーム対応のセオリー。
苦言の性質を分類した対応が求められ 「クレーム処理」 は、だれもやりたがらない仕事の代名詞。

損害賠償請求を受けるような大ごとはなかったが、理不尽と思える 「言いがかり」 もあった。
大人数の宴会にもなると、開始15分前に保冷庫から、刺身の舟盛りを各テーブルにセットするのだが、客が30分も遅れて、乾杯までの前口上も長すぎ、箸を伸ばすころには、刺身が乾いているありさま。

こんなこともあったなあ。
鍋コースの出汁に雑炊かうどんを選んで〆とするが、泥酔と悪ふざけに夢中となり、煮詰まった状態を口にされ、それが 「不味い」 とあからさまにクレームを入れてくる。

どちらのケースも、麺が汁を吸ったラーメンを食べて 「アンケートに暴論」 を書かれるようなもの。
だからと言って 「客が食べ方のマナーを知らない」 とは口にできないため、理不尽とわかっていても、意見に耳を傾けざる得ないのが、飲食店のつらいところ。

長い間、日本人は 「お客様を神様として崇拝」 した傾向がある。
そのこと自体は、顧客満足度に沿った考えだが、いつの間にか行き過ぎた 「形式重視」 な取り組みが客の質を低下させ、性懲りもなく些細なことに小爆発させる客は、今も時おり耳にする。

今日発売の 「ミシュランガイド新潟版」 をお店選びの参考にするのはいいが、客も店に選ばれるのを忘れてはいけないし、客は店に星をつけるが 「店も客に星をつけたい」 のが、経営者の本音。
飲食店や小売店は、客商売であるもの、決してお客のしもべではないんだ。

あえて 「無星の客」 であることも、飲食店でのたしなみのひとつかと思える。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | Bar & Human | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする