2020年05月19日

Episode 1

営業再開のお知らせ
緊急事態宣言の解除による、新潟県の休業要請は 「全面解除」 となりました。
当店 「21日」 より営業を再開し、当面の営業時間は一律 「AM2時」 までとさせていただきます。
衛生に努め、密を避ける所存ですが、ご不安な点はお問合せの上、今は取り急ぎ、ご連絡まで。

休業関連のことばかり書いていたこの頃。
ペン先を替えて 「店の小さなエピソード」 を一話。

心を痛めた、東日本大震災。
社会は喪に伏し、原発事故の影響による節電のため、街の灯りはめっきりと暗かった。
迫力を失ったネオンの光に、春雨が煙って見えた夜だったので、あの出来事は4月だったに違いない。

あの頃、平日も深夜3時まで営業しており、客足が途切れたのは1時30分頃。
扉の鐘が鳴るまで 「デヴィッド・ヘイゼルタイン」 を聴いていると、緩い音色がした。
目を向けるとベージュのコートを着た、見覚えのない若い女性が、赤い傘にしずくを垂らしながら立っていたので、傘立てを指さして、奥の席に導いた。

女性は4月に新潟へ着任し、店から近いマンションが会社の借上げ住宅というが、何かを気にしている態度が見てとれた。
きっと思い切って扉を開けたはいいが、こんな 「おっさん」 で、ガッカリしたのだろうと思えたが、実は駅前の繁華街から不審な男にあとをつけられているようで、回避のために扉を開けた胸を明かす。

「偶然、同じ方向じゃないの」 と聞くも、歩行速度を不自然に合わせられているようで、声を震わす。
「迎えに来てくれる人はいないのか」 と聞くが、慣れない土地でのひとり暮らし。
「警察に理由を説明して、パトカーで家まで護衛してもらえるか頼もうか」 するも、大ごとをためらう。
店に身をおいておけば、当面の安全は守れるし、もし男が客のフリで入ってきたとしても、瞬間の表情でわかるから、そうなれば 「オレの女だ」 ぐらい、便宜上のウソをつけなくては、この仕事は務まらない。

おちつきをとり戻す間、カクテル一杯で30〜40分はいたかな。
扉を開けて、左右の人通りを探り、横断歩道まで付き添い、大丈夫なことを目視で確認。
手持ちの赤い傘に紳士傘も持たせ、玄関や格子に吊るし 「男の気配を身近に漂わせておきなよ」 とお節介を焼く、深夜バーは 「深夜交番」 のような役割もある。

長く営業をしていると、あんなこと、こんなこと、いろんな出来事が収納されてくる。
人物や守秘は明かせないが 「だれも傷つかない話」 であれば、自分ひとりの胸にしまっておくには、もったいない気がするのは、僕の人生も節目にさしかかってきたのかもね。

文才なき 「エピソード」 で、小っ恥ずかしいが 「店の記憶」 を散りばめるのもいいんじゃないかと。

posted by GIG at 00:00| Comment(0) | Bar & Human | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする