夕方、店で提供する、お手製 「ピクルス」 を作ろうと、せまい自宅のキッチンに割りこんだ。
野菜を刻んだ後、コンロの手鍋に砂糖とお酢、塩を少々とスライスニンニクとローリエを順番に入れて、中火で沸騰寸前に火を止めて、こうして甘酢を作るのだが、やっちまった !
普段は台所に立つ亭主でないので、久しぶりだと勝手がわからず、やや動きもぎこちなくなる。
妻はその様子を横で見ながら 「こぼすなよ」 「ひっくり返すな」 と小言で、ゲキを飛ばしてくる。
「こぼそうと思って、作る男がいるか」 と反論したそのとき、砂糖が入ったガラスの容器をひっくり返し、床を汚してしまった。
ただでさえ、せまくてむし暑く、献立の材料がところせましなのに、タイミング悪く、へまをした。
すると低い声で 「掃除機」 と指示をされ、床を掃除している間、本来は楽しいはずのキッチンなのに、よどんだ空気に包まれた。
沈黙が息苦しかったので、気分を変えようと 「俺は正義の味方、さとうマン (砂糖) だー」 と叫ぶと、子どもをあやすかのように 「はいはい」 なだめられ、甘酢にカット野菜をひたされて、亭主が演じるニューヒーロー 「さとうマン」 はあえなく撃沈した。
キッチンは女性の聖域で、献立を作っているときに割りこむと、亭主はじゃまになると思える。
今度、ミスしたら 「さとうマン」 改め 「ピクルス仮面」 にでも、変身しちゃおうかな。
夏は 「ピクルス」 のオーダーが多いのは、この暑さで、みなさん 「お疲れ気味」 なのだろう。