「ジャズバー ギグ」 で開店し、まる9年が過ぎた。
最初は妻と一緒だったが、今は週末と忙しない日以外、ひとりでやるようになり、2年半が経過した。
22日 「開店9周年」 だった。
不確かな来店に気を躍らすことはないが、この日を知るお客さんもいるので、失礼にあたらないように、「内助の功」 である妻にも、平日の早い時間にカウンターへ入ってもらった。
08年の開店以来、いつも肩を寄せ合っている、30代のご夫婦が来店されたのが、夜の8時。
続いて、大人の親子関係をエンジョイしている、友人同士のような母と娘さん。
冬の店内に花の香りが広がり、週末には完全開花すると思われる、つぼみの色彩に気分を癒された。
春を前に、毎年一日だけめぐってくる日。
今流行の 「パーティーピープル」 とは画し、極めて 「ナチュラルピープル」 の店。
繁華街とは離れた場所で、何の後ろ盾もないジャズバーが続いていることは、大げさに言えば奇跡だ。
どんな店でも同じことが言えるが、お客さんの来店サイクルは変化するから、どんなに常連客であれど、自分へのメリットがなくなれば、いづれ離れていくのは、経験上わかっている。
そこには、色々な様相があり、人生観や交友観、女性観に男性観など、目に見えないものがうごめき、単純に 「飽きた」 なんて理由もあるだろうが、そんなのはあたりまえだと思っている。
遊園地で時計回りに動く、観覧車を思い浮かべてほしい。
テッペンの景色を見たら、あとはゆっくりと右から下がるが、その間、左からはまた新しいお客さんが上ってくるように、常に新陳代謝をしている。
そして、またいつの日か懐かしくなったら、扉を開けに来る。
バーは、嗜好性の高い空間だから、万人ウケしないし、また、その必要性もなく、個人の世界観が強い。
だから、大きく宣伝をしたり、店前にメニューボードを置くこともないし、あくまでも意思の選択権だ。
それも、自分の来店ペースで、何年も続く連続ドラマ小説のような、目に見えない独特の人間観がある。
毎年、何十軒もの酒場が、生まれ消えを繰り返すように、それはお客さんにも言えることだからね。
こう書くと、さぞかし、むずかしい世界にとらわれそうだが、むしろわかりやすい。
バーは、独立した個性が集う社交場だから、気遣いで疲弊することなく、人間関係は長持ちする。
意気投合も過ぎると、距離感が狂うように、孤独力と社交力を同時に試せる、特別な場所でもある。
そして、何よりも 「変わらない関係」 というのが、一番の魅力であろう。
俳句を得意とする女性客から、お店の心情を描いた素敵な句を頂戴した。
「九年のジャズ流れゆき春めぐる」
Special Thanks Y&M With Y&M ‥ You Are Very Generous.