2016年08月30日

My Father 3

「こんなことでもなきゃ、知らなかった温かさだったかもな‥」

親父の死去から一週間、何の変哲もない日々が戻った。
新聞のおくやみを、目にした人だけがわかればいいと思い、一行掲載で済ませた。
それ以外は、喪中の挨拶に代えさせてもらうつもりだった。

土曜日、開店7時に店の電話が鳴った。
この電話が冒頭の書き出し文となり、その昔に親父と一緒に演奏をしていたベテランやジャズクラブのオーナーを含む、地元のジャズを牽引している面々からであった。

時代の勢いはあるが、30年ほど前であれば、ハコバン (専属店契約) 以外に、音楽で生計を立てられる手練は存在していた。
また、手練だけに、それぞれの音楽に対する考えや条件、それなりの悩みやいろんな様相も起きたが、共通していることは、皆、ジャズを愛していたことである。

全国的にジャズのライヴハウスが、どこもヒートアップしていた、70〜80年代。
それ以降、下火になるのは世の習いだとしても、ジャズを好きな人たちの総意で、はじまったと思われるイベントが、今年で13年目をむかえた 「新潟ジャズストリート」

ボクは関与してないので、おこがましいことは言えないが、それぞれ好きなジャズのスタイルはあるもの今や新潟の象徴的なイベントにまで、成長したと思える。

イベントとして、2003年に発起しながら、親父は2000年には、もうスティックを置いていた。
ドラマーにとって、致命的な病を発症したため、どうもリズムが怪しくなり、観客の前で演奏することから次第に遠ざかりはじめたのは、プライドの高さもあったと思われる。

ある日、それまで使用していたドラムセットを 「思い残しても仕方あるまい」 と、記憶が正しければ、 若手のドラマーに譲ったんじゃないかな。
それを契機に、あまり過去を語ることがなくなり、ひとり暮らしの闘病生活に入った。

一時は、このまま引きこもる心配もあり 「たまには、ジャズでも聴きに行くか‥」 と連れ出そうとしたがやりたくてもやれないもどかしさが、逆にストレスになるようで、誘いに応じることはなかった。
こうして、最後一緒に聴きに行ったのは、東京青山のブルーノートで 「トミー・フラナガン・トリオ・ウィズ・ジョニー・グリフィン」 だった記憶がある。 (ドラムのルイス・ナッシュがやわらかったなあ)

本当は人一倍さびしがりやで、音楽仲間や有望な若手を連れて、古町で飲むのが好きだったようだ。
それが、杖をついて車椅子に乗るようになり、最後の印象は元気だった姿を残しておきたく、自分が  枯れていくのを、見られたくなかったんだろう。
そういう意地を張るのは、九州男児の血統を引いているのだろうか。

また、昔気質のバンドマンは 「飲む・打つ・買う」 で、特殊に生きるイメージもあった。
「飲む」 は否定しないが、話好きでヘソ曲がり、大してお金もないのに、人の面倒見だけはよかった。
関係者の話を聞くと、若手にニラミが利く、親分気質な存在でありながら、冗談や話がめっぽう好きで、演奏前後の楽屋談義では、ツボにはまればおもしろかったんじゃないかな。

そんな 「不良タイプ」 でありながら、子育ては尊敬される大人として、真っ当に生きていた。
もしかしたら、レギュラーグループをはじめ、サポートメンバーは、こんな親父のタイプに困惑しながらも共通言語のジャズで、熱い演奏を展開したのかも知れない。

昨晩、当時の流れや思い出を語れる男女の面々が、カウンターに4席あった。
ボクとの年齢差や対面に壁を作らず、昔話で供養していただいたことが、何とも儚い夜となった。
あえて、名は書き連ねないが、新潟のジャズファンなら、だれもが知る存在である。

深夜、89年 「新潟パルティア」 で録音された、カルテット編成のライヴ盤を久しく耳にした。
当時と比べて、耳は肥えたと思うので、親父のドラムを語彙にすれば、レガートが攻撃的で、スネアーが乱暴ぎみで、少しおさえてほしい印象はありながら、ブラシに持ちかえると 「えっ‥ 美しいじゃん」 と思わせられたり、好みの違いでしかないけど、好きな人とそうでない人に分かれかもね。

30年以上も、細々とジャズを聴いてれば、当たらず遠からず、感想に広がりを持てるようになる。
親父は 「よい子の見本」 のような、整合的な演奏はしないから、泥臭い感じだったし、晩年が健康であったなら、何とも 「枯れたドラム」 も聴いてみたかった。

これまでのブログ上、文脈のつなぎぐらいで、ほとんど 「親父の存在」 を記したことはなかった。
今日のことがなければ 「職業 ジャズドラマー」 で、こういうかかわりがあったことは、ふせていた。
それこそ、冒頭の書き出し文 「そんなことでもなければ‥」 である。

ボクはボクなりのジャズの愛し方で、「ゆるさを大切」 にした 「ジャズバー」 を続けていきたい。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Bar & Human | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする