秋の夜長 お客さんと緩い音楽談義をしていた。
1964年 ボブ・デュランの名曲 「マイ・バック・ペイジ」 をピアノトリオでカバーしたアルバムが耳に残っているというが、もう30数年前に聴いた曲なので、だれの演奏だったのか思い出せず、しばらく 会話が宙をさまよっていた。
「きっと、探しているのは、このアルバムだな…」
67年 キース・ジャレット・トリオ 「サムホエア・ビフォー」 の一曲目を流して、ジャケットをカウンターにおいた。
本作 若かりし頃の チャーリー・ヘイデン ポール・モチアン との実験的な試みを思わせられる。
ベースのソロテーマから入り、次第にリリカルな展開となり、絶望と哀愁、今を生きる希望を抱かせる。
いろんな人の想いが、かけめぐるナンバーであろう。
このアルバムの魅力は、少し耳障りで粗っぽい演奏の中に、まぎれもない青春の香りがするところ。
学生時代の飢えと渇き、政治的な批判や社会を風刺しながら、次第にスーツを着てネクタイを結ぶ頃、自己との対話をすることになる、そんな若い日々の心境に戻れるんだ。
「マイ・バック・ペイジ」 と 「バーボン」 少しお疲れの 「フリーカメラマン」 がくつろいでいた。