場所は、9月23日 「新宿ピットイン」 (昼の部)
グループ 「板垣光弘トリオ」 メンバー 板垣光弘 (P) 吉木 稔 (B) 三科律子 (Dr)
陽の光が届かない、地下の扉を開けると、余計な装飾は一切ない、無機質な空間が広がっている。
ピンスポに照らされた楽器を見ながら、どんな演奏を聴かせてくれるのか、気分は高揚していた。
ステージ左手には、よく磨かれたグランドピアノ。
中央には、重厚なマホガニーのウッドベース。
右手には、グレッチのドラムセット。
ピアノの指が左右にカリカリとスライドし、ベースの背中が次第に低くなっていくと、ドラムが絶頂でトップシンバルを炸裂させる。
強烈な刺激を交わし、三位一体となった瞬間、客席からも 「イェー!」 という歓声が浴びせられ、音量制限のない空間がひとつになった。
ファーストステージのラストは、アップテンポで編曲された、スタンダードナンバー 「チェロキー」
オリジナルとスタンダードの選曲が、バランスよく調和しており、自作のエッセンスに魅了された。
そんなにメジャーなトリオじゃないけど、これほどの腕前を持っているメンバーは、東京ではゴロゴロしているんだから、個性の宝庫である。
まさに 「演奏だけで勝負する」 ライブハウスの誇りが 「今年で開店50年」 の歳月が物語る。
ジャズは時を超えて、時代も移ろい、価値観も変わった。
3列目の真ん中の席から、店内を見渡すと、昔から変わらない空間に安心した。
耳の肥えた観客も多く、ステージで演奏する人も、生半可では出演できない緊張感もある。
だけど、観客はやさしいんだ。
若手の成長を見守っていたり、ベテランにしか出せない、枯れた味わいをわかっていたり。
長い時間で、温かく見守ろうという姿勢もあるから、そのときの演奏だけで決めつけることはしない。
新宿の雑踏は、ジャズの似合う街だ。
同じ雑踏でも、渋谷や六本木では、整いすぎて似合わない。
ボクは、だれにも気兼ねせず、ジャズを楽しみたいから、ディナーやラウンジ形式は好まない。
聴くのなら、音の空間を埋め尽くすように、玉汗が流れ落ちる、アグレッシブな演奏がいいな。
ライヴは鍵盤の低音部のかたまりが響き終わり、ベースの重低音が沈んで消え、ドラムのハイハットのクローズで締めくくった。
10人ほどの観客からは、まばらな拍手がおくられたが、知る人のみぞ 「温かみのある拍手」 だった。
http://jazzbar-gig.seesaa.net/article/463733002.html ( Mitsuhiro Itagaki (P) )