遠洋漁業の船乗りたちは、星空を見上げて、今いる位置を知ったという。
11日 午後にテレビをつけたら、大相撲夏場所2日目のざわめきが飛びこんできた。
このときばかりは、テレビの音声だけでも、時計を見ずに時刻を言い当てられる。
部屋の射光だけでも、今は何時か当てられるだろう。
夜に仕事をする者にとって、昼から夕方にかけては、世間が思うほどヒマではない。
お店の買出しや仕込み、自宅の雑用など、結構やることがあったりするものだ。
それと業種の性質、家族構成から年齢など、表面的な部分だけで判断できない。
おかれている立場は異なりながら、開店前に用事を済ませておくことが、商売の心得となる。
バー空間は自然光ではなく、暗がりに間接照明を灯し、仕事に疲れた人を癒す空間となる。
そうなると、時計はうっとおしく感じるから、店内に時計がないのはそういう意味である。
「えっ、もうこんな時間なの…」 ぐらいが、ちょうどよかったりするのはそのためだ。
お店の時計代わりに、音楽をチョイスしているときがある。
夜も浅いうちなら、躍動感にあふれて歌心のあるジャズ。
夜も更けてきたら、都会的で親しみやすく色彩的なジャズ。
深夜になれば、スローテンポの美しいバラードを流したくなる。
お客さんがいないときは、今夜ボクが欲しているジャズだ。
とはいえ… お客さんの気分に合わせているときのほうが多いけどね。
音楽は空気の読み合いながら、楽曲を聴き流していたほうが、本当の粋だったりする。
時計と音楽は、同軸チャンネルみたいなものだ。
星空代わりに、音楽を流していると思ってもらえたら、ありがたい感性である。