2015年04月27日

野生時代

昭和49年 8月某日 金曜夜 …  その時刻は、きっと 「8時48分」 ころであろう。

小学4年生だったボクは、テレビの前で上下純白のデニムを鮮血にそめ 「なんじゃこりゃー!」 と叫ぶジーパン刑事の姿に呆然としていた。

先日、部屋を整理していたら、薄汚れたビデオテープが出てきた。
インデックスには 「ジーパンとシンコ、その愛と死」 と油性マジックで書かれていた。
そのままデッキで再生すると、新宿を疾走する24歳のジーパンこと、松田優作の若き姿が現れた。

人気テレビ番組 「太陽にほえろ」 ジーパン刑事が殉職する回の録画テープである。
あらすじは、同僚のシンコと婚約を決めたものの、一方では暴力団がらみの凶悪事件も抱えていた。
ヤマが動き出したときには援護が間にあわず、ひとりで暴力団と廃墟の中で銃撃戦をすることとなり、   ジーパンだけに助けを乞う、チンピラ青年を命からがら救い出したのだが…   やつは裏切った!

命の恩人であるジーパンに銃口を発射して、そのまま逃げ出してしまったのだ。
ジーパンは、なにがおきたかわからぬまま、逃げる青年の後ろ姿に 「待ってくれ」 と声をかけ続ける。
正気になったとき 「オレは死ぬのか…」 と泣きながら、失意のまま孤独に逝ってしまう。
ボクは子ども心に 「あの男、裏切ったんだ」 と思い、ジーパンが殺されたショックに震えた。

過去、何度も 「松田優作」 について書いた。
角川映画のハードボイルド、探偵物語のコミカルさもいいが、ボクの中では、野性味あふれるジーパン刑事こそ、高度成長期の新宿が似合う、正義の青年像として目に焼きついている。

89年 病で亡くなる、数ヶ月前のトーク番組で、その殉職シーンをワイブで見ながらこう言った。
「若かったね…」    映画 「ブラックレイン」 の撮影を終えたばかりだったから、こうもとれる。
「まだ、青いな」 「ヘタだな」 「ああ、こんなときもあったなあ」 「がんばっていたね…」 と。
人知れずに闘病生活を続けながら、ハリウッド俳優を目前にした心境からすれば、達観的であろう。
しかし、まさか自分が病で死ぬとは思ってなかった、そんな節もあるんだ。

そう考えると、青春の飢えと乾きを味わった男ほど、一瞬の閃光が凄まじかった気がするし、あとから   その時間の貴重さを整理できるようになれば、大人の時間が味わい深いものになると思える。

男は後にスタイリッシュになっても、バンカラ風な青年だったときには、野生の魅力に満ちあふれており、その意味では、大都会を疾走するジーパン刑事は若者の魂を揺さぶった 「完璧な青春像」 なのだ。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Cinema Fan | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする