山崎まさよしがしっとりと歌い上げた、映画の主題歌 「8月のクリスマス」が好きだ。
出だしは、「ありふれたできごとが こんなにも愛しくなってる」からはじまる。
「わずかな時間でも ただ君のそばにいたかった」と続く歌詞を聞くと、思わず胸がじんとくる。
ある日、彼女がカウンターでこう言った。
「日常は奇跡だと思う」
僕も、そう思う。
彼女は日常、どれほどの幸せを感じていたのだろうか…
食事は慎ましくていいから、一緒に楽しく食べられればそれでいい。
よほどのことがない限り、高い買物はしないし、バカンスに出かけることもなくなった。
節約生活をしているんじゃなくて、もう多くのことを求めずに済むようになったんだ。
それまでの時間で、モノの価値観や味覚を判断できるように、理屈とは違う感性で生きているんだ。
成熟した大人になるということは、そんなことなのかも知れない。
その言葉を聞いたとき、何もかわりばえのしない日常に人の魂が宿ると思った。
そして深い共感と慈しみの気持ちにも包まれた。
「確かに君がいた あの夏の日に 確かに僕がいた 8月の空の下」
エンディングを聞いていると、日常のあたりまえが身にしみてくる。
フィクションではあるが…