2014年07月07日

How are You ?

休日の午後、洗面台でひげを剃っていたら、固定電話のメロディーが鳴り響いた。

妻がめんどうそうに居間でコールを受けると、急に声のトーンが明るくなり、子機を耳にあてたままの  視線で洗面所にかけよってきた。
だれなの…? そんな表情でたずねると 「ちょっと待ってね…」とマイクを指でふさぎながら、「Aくんよ」(外国人の名)と、嬉しそうに子機を手渡された。
僕はあわてて、顔の右半分についたままのシェービングクリームをバスタオルでふき取り、それ以上の トーンで彼のファーストネームを確認した。

今年で45歳になる言語能力の高い彼は、ミャンマー人で東京で一緒に仕事をしていた旧知の仲だ。 
そのつきあいは私生活にまでおよび、信頼がともなった誠実な関係を保っていた。
素性は日本人以上に、礼節と仁義を重んじ、人の気持に敏感で正義感にあふれていてやさしい。
やさしいから気持ちが強く、曲がったことに怯まない、実際の勇気も目の当たりにした。
それはどんな言葉の積み重ねよりも、信頼は行動でしか証明されないもので、共通の目的に向って  一緒に仕事をしたことのある、けして大げさではない戦友のひとりである。

出会いは仕事つながりながら、気が合っていたんだろうな。
夫婦で招待された、椿山荘でのミレニアム婚では、日本人の友としてスピーチを依頼され、司会者から 「日本で慕うおじさん」と紹介されたときは、さすがに祝辞の出ばなをくじかれてしまった。

発信元は国際電話ではなく、東京からだった。
電話で話すのは10年ぶりで、会うことになれば12年ぶりにもなろうか。
混乱が続く本国との往復もあったせいか、音信不通の状態が続いていたが、今さら何も言うな。
日本に再入国したのも、よくよくの理由とロマンがあってのことであろう。 
それより、連絡をくれたことのほうが、何十倍も嬉しいんだからね。

その間、彼はどんな人生を歩んだかわからないし、興味本位で空白の時間を知ろうとも思わない。
呼吸が合えば切り出せるだろうが、僕も自分のことを明け透けに語るつもりもない。
最初に確認しあうのは、おたがいの健康と相手の生活を気にとめておくことのほうが自然である。
ただ、今は彼と直に会って、テライのない思い出話で、夜を明かしてみたいこと。

顔右半分のひげのそり残しに気づいたのは、夕暮れせまる万代橋のたもとあたり…  あぁ 恥かしい。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Bar & Human | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする