2014年06月19日

Jazz Talk Vol.46

ジャズ喫茶が全盛だったころ…

どこでも、キース・ジャレットの 「ケルンコンサート」  ビル・エヴァンスの 「ワルツ・フォー・デビィ」  ばかりがリクエストにかかっており、それがもとで 「名盤嫌い」になったという人を知る。

僕がジャズ喫茶に出入りしたのは、一時のピークが過ぎ去った80年ころかな…
ちょうどレンタルレコード店が話題のころだったから、そんなに頻繁に通ったわけでもないのだが。
初めてリクエストしたのが、高校1〜2年のときにドキドキしながら、えーと、なんだったけなあ…    ほら、あれ… マイルス・デイビスの 「フォア・アンド・モア」だったと思う。

それまでは、自宅のステレオ装置で近所に気を遣いながら聴いてたが、ここでは気にすることはない。
金属の火花が飛び散ってくるような、トニーのシンバルレガートにビビらされ、手元のキューブアイスにスライスレモンが一枚添えられたグラスに、今では懐かしいビンコーラを注いでいた。
そのお店は、西堀の老舗 「スワン」である。

本作も名盤に違いないが、僕の若さゆえ、シャープなスピード感でテンポよくノリ飛ばせるジャズを好みこれこそがジャズと思い込んでいたから、バラード曲はすっ飛ばしていた。
それが今ではバラードにこそ、その人の温もりがあるようで、アルバムの注目曲にしているほどだ。

実は冒頭の体験談に、我が身が陥らないよう、好きなアルバムほどあまり聴かないようにしている。
このあたり、「空腹は最高のごちそう」と言われるように、恋しくなってきたときに聴いてこそ、思いの外に敏感に聴きこめるのである。

その意味でアルバム、ビル・エヴァンスの 「ユー・マスト・ビリーブ・イン・スプリング」
マル・ウォルドロンの 「オール・アローン」 など、好きなアルバムほど聴かないようにしている。
楽曲に絞れば、ジャコ・パストリアス作曲の 「スリー・ヴューズ・オブ・シークレット」からは、人生の物語を感じずにはいられない。
キース・ジャレットが奏でる 「ビー・マイ・ラブ」は傷ついた心を癒してくれるようで、思わず涙がスッーとひとすじ流れてくるようだ。
今の時季なら、小野リサが歌うボサノバ 「カント・パラ・ナナン」は、仕事で疲れた体を聖母にやさしく  抱きしめられているような、特別な感情に包まれるようである。

これらの曲は、あんまりカバーされていない気もする。
あるピアニストが、「隠れた名曲(名盤)ほど演奏しずらい」と言っていたことがある。
真意はたずねなかったけど、料理にたとえるなら、自然の素材にあれこれ調味料をまぶしこませ過ぎ、肝心の味を台無しにしてしまうことが、あまりにもおそれ多いためであろうか… これいかに。
こうして好きなアルバム(楽曲)は、やたらと聴かないのは、気持ちのしみいり方によるもの。

深夜、お客さんのいない時間にひとりで聴いているアルバムこそ、本当のお気に入りなのである。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Jazz & Music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする