2013年05月13日

過去は語らず

古町で買物をしていたら、「あれ、Eちゃんでしょ…」と声をかけられた。
(Eは僕の頭文字で、ちゃんずけは昔の夜の業界用語みたいなもの)

最初に気づかなかったことを詫びてから、どちらからともなく自然に笑顔で握手をした。
その人、昔は古町界隈で飲食店を営んでおり、今はもう還暦を越えて夜の世界からは引退されている。
仰々しい挨拶もなく「調子はどう」「元気なの」で、会話に入れる気軽さが対人慣れしているところだ。

今夜は夜の世界を(80年代)を語ってみたい。
水商売をさげすむ人がいるけど、自分とは直接関係ないからさげすさむんだ。
昼の仕事は標準的な見方をされてた反面、夜の仕事に対しては屈折的な見方をされていた。
咲かせたい花は同じなのに、まだまだ世間の偏見があった頃だ。

今では考えにくいけど、夜の世界ではスパルタ式が全盛だった。
黒服は店の「軍隊長」みたいなもので、バブル全盛での「学生アルバイトの黒服」なんて誰もいない。
そりゃ、店を一軒、力量では複数の店も任されるんだから、それなりの器量がなくては務まらない。
だから、お客さんも安心して寛げたし、トラブルひとつも解決できない男に店は任せられなかった。
世間的に黒服というだけで、女ズレした軟派なイメージをもたれてしまうが、それはメディアに顔を出したがる自意識過剰な黒服のこと。
本当の黒服は地味で孤独、自分の職務を遂行することに極めて忠実で生き方もストイックだった。

80年代、学校にも行かず、礼儀や言葉遣いも知らないような、不良が飛び込んでくる世界だった。
暴走族上がりも多かったから、必然的に腕っ節の強い男が現場を統制することになる。
一度は力でねじ伏せられて、まずはビシッと挨拶から教育されるわけで、柔道や空手の有段者が   多かったのはそのような意味もあったんだと思う。
今のように「体系化されたペーパーシステム」があったわけでもなく、もっと泥臭くて根源的なところを  徹底的に鍛えられた修業時代だったような気もする。
技術的なところより、人格的なところを指導していきたいという、昭和のお節介になるのかも知れない。
だけど何よりも重要だったことは、純粋に家族のような結びつきを作りたいと願っていたことなんだ。

だから「Eちゃん…」なんて、少し砕けて声をかけられると嬉しくなっちゃう。
夜の街にも歴史があり、時代に変化を遂げながら、やがては文化になって行く。

90年代、「店長産業」と呼ばれた礎作りに参加できた自負はありながらも、過去は語らずである。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Bar & Human | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする