2013年03月26日

Sadao Watanabe (As)

「音色に父性を感じる」

好きなアルトサックス奏者は、「ナベサダ」 の愛称で親しまれている 「渡辺貞夫」 御年80歳。
時の音楽ブームで一挙に浸透した愛称だが、周囲に気安く 「ナベサダ」 と呼ぶ人はいない。
そういう僕も自然と 「サダオさん」 と敬称を使ってしまう。

これまで10回は生演奏を聴いているが、聴くたびに深まる優しい音色に気分をあずけている。
語ると長くなるので中略するが、けしてテクニカルな部分で感動を与えるタイプではない。
寧ろ、内面から込み上げるフレーズで、人の心を穏やかにしてくれる魅力がある。
酸いも甘いも知り尽くした、往年の名プレイヤーが成せる業。

先日、BS放送で録画した 「渡辺貞夫ライブ・IN・下関」 を見て、改めて感じさせられた。
選曲は自身が歩んできた道をかみ締めるように、縁の深いスタンダードを中心に取り上げていた。
上手に聴かせようとか、音を押し付けてくることもない。
音色を聴けば、誰が吹いているかわかる、個性的な情感がある。
例えるなら、演奏会の帰り道で、熟年夫婦が肩を寄せ合いながら 「今日は楽しい一日だったね…」 とつぶやきあえるような温かさがある。

妻はあまりジャズを聴かないんだけど、サダオさんは聴くんだよね。
一部のジャズ好きにしかウケない音楽じゃなくて、万人の情感に響いている音楽だからと思える。
愛妻家で知られるサダオさんは、数年前に精神的な支柱となる奥さんを失った。
晩年のステージでは、好んで取り上げるバラード 「 Everything Happens To Me 」
それを聴きながら、どんなことを思い巡らして吹いているのか 「哀愁のブロー」 がある。
それでありながら、最後は 「楽しさ溢れる曲」 で、会場を盛り上げるあたりが愛される人柄。

僕はジャズで影響を受けた人には、今でも 「さん」 づけなんだ。
会ったことがあればなおさら、どこか尊敬の念があるのだろう。
サダオさんが 「チャーリー・パーカーは越えられない…」 と言ったように、憧れは情緒となる。   
それにひとつを究めた人、好きなことをやっている人は、他人に対して構えた表情をしてない。
自信がある人の態度は自然だし、人柄は音楽にも出るからね。

僕なんてサダオさんの前では、きっとひとりのミーハーなジャズファンに戻るんだろうね。
それにしても、本当にいい顔、いい笑顔、大人なのに子どもにもなれる、父性を感じるプレイヤーだ。

posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Jazz & Music | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする