楽器を習う、中年おじさんが増えていると聞く。
一番人気はサックスらしく、その次がギターにピアノらしい。
そもそも、おじさんがなぜ楽器を習うかといったら、女性を意識してのことだろう。
それは最初だけで、人前で聴かせられるようにもなれば、そんな動機は覚めている。
人前で演奏してこその習い事。
英会話を始める動機と似ている。
情操的な趣味は周囲の眼差しもあって、長く続けられることもある。
おじさんが楽器を習うんであれば、ピアノでポピュラーかジャズがいいと思う。
男が背筋をビシッと伸ばして、「白鳥の湖」や「童謡」を弾くわけにはいかないだろう。
基本レッスンなんかすっ飛ばして、弾きたい曲からやりゃいいと思うのは、おやじはあまり時間がない。
ネイティブじゃないんだから、おいしいフレーズだけ練習すればいい。
いい加減さもないと、大のおじさんが子どもとクラシックの発表会に参加することになる。
控室で小学生に交じり、髪を七三に分けて、タキシード姿で「ワナワナ」緊張して待機する姿。
あー想像もしたくないし、僕がピアノを弾けたとしても辞退しちゃうね。
仮にステージに立ったら、山下洋輔ばりに鍵盤をエルボーしながら弾くだろう。
「ガキども聴きやがれ、これが俺のフリージャズだ。ワーオ!」とか言ってさ。
会場をパニックにして、子どもたちを「エーン、エーン」と泣かしちゃったり。
それがきっかけで、5年通い続けたピアノ教室も辞めるハメになったりしてさ。
楽器は謙虚でテキトーな情熱で、高望みしなくてもある程度はさまになるもんだ。