2013年02月12日

キャバレー

日本で一番有名なジャズの名曲といえば、たぶん「レフト・アローン」かと思う。

1986年 角川映画「キャバレー」の主題歌といえば、ピンとくる世代は多いだろう。
マル・ウォルドロンが、ビリー・ホリディに捧げた曲となってしまった鎮魂曲である。
聴けば「あー、アレね」と、うなづくであろう。

あらすじは、ヤクザの親分が不義理をした舎弟を場末のバーで射殺した。
そのとき、ジュークボックスでかかっていた曲がレフト・アローンだった。
親分は舎弟を弔うため、生バンドが入っているキャバレーで、いつもレフト・アローンをリクエストする。
テーブルには、ワイルド・ターキーのストレートをノーチェイサーで…
僕の記憶が正しければ、映画のはじまりはこうだったと思う。

チープな印象は否めなかったが、夜に生きるバンドマンたちの姿を描いた。
現実の繁華街ルールも多少描かれながら、筋者がジャズ好きかは知らない。
バンドがハコ(店)と契約しているクラブでは、お客のうたばん(伴奏)が最も大きな仕事となる。
故に筋者が好んで歌う定番は演歌に次いで、映画「ゴッドファーザー・愛のテーマ」だったと訊く。

カラオケが普及する以前、バーボンとジャズ、ホステスは社交場の三点セットだった。
クラブの客は飲み方がきれいで金払いも良く、酔って店の女に手を出すような間男は少なかった。
泥酔して店に迷惑でもかけようものなら、タフな黒服からさっさと外へつまみ出されていた。
当時の黒服は、バーテンダー兼ホール、そして用心棒(バウンサー)なのである。

お客さんも普通に楽しく飲んでの社交場。
だが、舞台裏では毒々しくも厳しい上下社会がある。
それに夜の世界、過去を探り合わないことが暗黙のルールとなる。
互いの経歴を含めて、働いている人たちにはいろんな事情があるんだ。
身を置くも置かぬも、個人の自由と力量。
マニュアルなんてない世界だっただけに、自分流の教育でねじ伏せていた時代である。
まかり通っていた背景には、夜の世界では腕力至上主義がまだ色濃く残っていたからなんだ。
今の時代、そんなことをやったら大変なことだよね。

映画「キャバレー」は、バブルの好景気に突入した頃の封切りである。
今思えば、夜の世界で働く人たちの、大きな曲がり角となった作品のような気もする。
正直に面白い映画ではなかったが、背景には夜の世界のいろんな場面も隠されていた。
このまま軍隊思考を貫き通すか、それとも勇気を出して変わって行くか、転換期を示唆した映画だった。

「レフトアローン」  当時、僕自身は若くて純粋な状態で、店を任された高揚感は衰えなかったね。
posted by GIG at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | Cinema Fan | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする