2012年05月18日

吉村達也(作家)

僕の好きな作家である吉村達也氏が、今月14日に胃がんのため60歳で死去していた。

推理小説を初め、サスペンスやホラーも手がけ、凄まじい勢いで新刊を出版できるスピード作家だった。
それも出版量で席巻するだけでなく、質においても小刻みで大胆、意外なところで展開を裏切る小説の愉しさを教えてくれた。

僕が最初に表紙を開けたのが、1993年角川文庫のホラー小説「初恋」からだった。
それから、1994年「文通」、1995年「先生」〜 2005年「ビンゴ」、2006年「グリーンアイズ」と続き、その合間で推理小説、サスペンス小説をランダムにめくっていた。
彼の小説は、人間なら誰にでも隠されていると思われる、内面の恐怖を描いている。
本人曰く、この世で一番怖いことは、生きている人間の人格と言い切るあたり。
その人格破綻した異常行動を描かせたら、彼の右に出る者はいなかったと思う。

誰でも、日常生活で一度や二度、背中に冷たいものが走った経験があるだろう。
「感じがいい人」のはずなのに、その正体は言論の質が低い、「クレームモンスター」だったり…
「にこやかな人」のはずなのに、その正体は粘着質で執念深い、「ストーカー」であったり…
彼は匿名性がもたらす二重人格、メールで感情的に論争を吹っかけてきたりする、現代病にほど近い精神状態をいち早く題材にして小説化とした。
つまり、性格の二重構造という恐るべき特質を小説化することには、とても長けていた。

小説を読みながら、「どうして、こいつは、こうなってしまったんだろう…」を考えると結構面白かったし、職業や立場、年齢や学歴などで、「人間性を保証できる時代でない」ことも文中で言い表している。
全冊読破した訳じゃないが、短編の読みやすさで紹介すれば、1999年「踊る少女」なんかは、最初の試し読みする分にはお勧めできる。
「もしかしたら、身近にいるかも…」と思われる、まずは7人のモンスターと対面してみたらどうだろうか。
あまりにも、現実的な恐怖に直面するであろう。

吉村達也さんの死後、公式サイトには、「私はこのたび、死んでしまいました」と文章が掲載されていた。
自分自身の死まで、ミステリーな演出をするなんて、やっぱり彼は天才作家だったんだ。    合掌。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Diary & Social | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする