2011年08月21日

はしご酒

佇まいに年月を感じる大衆居酒屋が好きだ。

シャレた店内のBGMはジャズを流し、和洋中を「俺流の創作料理」で提供し、雑誌でやれ「リーズナブルだ」、「カジュアルだ」と宣伝している店には、ずいぶん縁遠くなってしまった。
そういう店に出入りしていたことは、あるにはあるのだが、どこか交われないのが本音である。
近代化で変わる街の風景に似合わない、ひっそりとした佇まいの店に惹かれる。
懐古趣味はないので、商業的に作られたブームに流されることはないが、微かな文化を漂わせている雰囲気がある店は好きだ。

若い頃、僕とデートした女は、ことごとく憮然としたと思う。
手前味噌な言い方だが、流行を仕事にしていたくせに、流行の店にはプライベートでは行かない。
当時の仕事柄、人気のある店に連れて行ってくれるとでも思っていたのだろうが、引っ張って行く店と言えば、一等地ではないエリアで営業している、こじんまりとした店が多かった。
例えば、夫婦で営業している小料理屋とか、店主の人柄が肴になるような小さな居酒屋。

飲む相手が男であれば、「どこそこで、金髪の女がいる店で飲んでるから、今から来いよ!」と、誘い出して来たのはいいが、70歳近いと思われる白髪のお婆ちゃんを見て、目がテンになっていた元部下。
「あっ、悪い悪い、金髪の女じゃなくて、白髪だったわ…」からで、その夜が始まる。
そんな元部下は、Yシャツを着替えて、オーデコロンを耳の後ろに大量に振りかけてきたもんだから、「焼鳥屋に来るのに、何でそんな恰好つけてるの」と、冷やかして爆笑モノだった。
こういうノリなので、流行モノやスタッフの演出に走る、変り種風の居酒屋とは無縁だった。

一軒目の居酒屋の暖簾は、「何もしてくれるな」である。
強いて言えば、最初のビールは早く持って来てくれぐらいで、それが僕の居心地だったりする。
ただし、コレは避けたいと思う、僕なりのこだわりがある。
それは、居酒屋から居酒屋へのはしご酒。
それが癖になると、長尻、セコい、下世話な会話、酒癖が悪くなる、平気で料理を残す体質がつく。
第一に、粋じゃないでしょ…
だから、一軒目の居酒屋選びは、はしご酒へ向けての真剣勝負である。
それが、二軒目も居酒屋ならば、さっさと他へ飲みに消えてしまうタイプだった。
一軒目は、「酒と料理」を味わい、二軒目こそ、「酒と会話」に重きを置いて飲んだものだ。
一軒目の暖簾がオープニングとなり、二軒目こそが人となり、素顔が見える場面でもある。

はしご酒とは、社会の歩き方だと思うので、たまには歩く道も変えなきゃ、つまらないんじゃないのかな。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Bar & Human | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする