2010年11月09日

野獣死すべし

今から29年前の秋、松田優作主演「野獣死すべし」が全国一斉ロ−ドショ−された。

当時、高校一年だった私は、東堀六番町にあった「東映パラス」から出てくると、街中をひっそりと歩く彼の姿を真似て、夜の古町通りをその気になって歩いたものだ。
若者なら誰もが、自分自身がカッコ良くなった錯覚に陥ったと思う。

彼の主演作品で、最も人気が高いと思われるのは、野獣死すべしであろう。
前作の「蘇える金狼」で演じた屈強な男とは異なり、貧弱で影の薄い男に役柄を作り変え、誰も想像つかないハ−ドボイルドを演じたことが、いまだに語り継がれている理由だと思える。
それまでのハ−ドボイルドは、若者のモヤモヤしたカタルシスを解消してくれた作品だった。
現実に銃をぶっ放したりすることができない、若さゆえの乾いた飢えを満たしてくれたと思える。
どこかアダルトビデオでマスタ−ベ−ションし、男の欲望を散らしているような感じなのかも知れない。
そんな期待を見事に裏切ったのが、野獣死すべしである。

彼はそれ以来、遺作「ブラックレイン」まで、アクションを必要とする作品には出演していない。
それは役者としての幅を広げるためもあったと思うが、自然と自分を作り変えていくような気持になったかのようにも思える。
実際、ブラックレインのオ−ディションでは、リドニ−・スコット監督から、「アクションはできるのか?」と質問されたことが、一番嬉しかったというふうに聞いている。
それは、「日本のアクション俳優」としての画一的なイメ−ジではなく、「世界の演技派俳優」として望まれ、その上で認められた瞬間だったことは、想像に難しくはないであろう。
もちろん、その役柄は真骨頂でもある、「狂気の俳優」を思う存分発揮したことは言うまでもない。
そこに行き着くタ−ニングポイントとなった作品が、「野獣死すべし」だったと思っている。

今、生きていたとしても、やっぱり近寄りがたい存在でありながら、だてに年齢はとらなかったはずだ。
posted by GIG at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Cinema Fan | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする